カテゴリー別記事: ぞうき林

次につなげる

 山の緑が“初夏色”になってきた。汗ばむ日もしばしば▼足利担当として先月も本欄で話題とした国重要文化財の刀を展示した「山姥切国広展」。このほど、その実施結果を足利市がまとめた。3月4日から4月2日までの間、足利市立美術館を会場に実施。入場者は3万7820人。前年度の同美術館の入館者数が2万4885人というから、わずか1カ月で前年度1年分の約1・5倍をたたき出したことになる。経済効果は宿泊、飲食、物品購入、交通費などで約4億2000万円という▼約3500サンプルを集めた来場者アンケートではこの特別展について「非常によい」が最も多く81・5%、「良い」を加えると約98%が「満足した」という結果となったから驚きだ。その理由は「市民のみなさんがあたたかく迎えてくれた」「工夫を凝らして快適に過ごせるようにしてくれた」との感想をみると理解できる▼背景には入念な準備や開催期間の臨機応変な対応など、関係者の工夫や努力があったからだと思う。かかわった人にとってもこれから仕事をしていく上での財産になったに違いない。ここでの経験を次にどうつなげていくか同市では検証をしているようだ。(

ゆだねる感覚

 春の植樹デーで足尾に出向いた。植樹地まで700段の階段を上る。これが一つの難関だが、標高が増すごとに広がる谷の眺望に目を奪われ、疲れを忘れる▼ここ数年、特に感じるのは若い世代の参加が増えていること。学校単位での参加も多く、2005年に足尾高校と日光高校が統合して誕生した日光明峰高校の生徒が、ボランティアできびきびと動けば、宇都宮や佐野、小山などの高校生がスコップを手に苗を植えている▼その一方、元気な高齢者の姿も多い。80歳の記念に参加したという女性は、周囲からの祝福を受けてほほ笑みながら、青空の下で気持ちのいい風を受けていた。年に1度、以前自分が植えた木を見に来るという人も多く、獣害で苗木を食べられたという男性は、いずれ成長する木もあるはずと、めげずに植樹をしていた▼人の取り組みには限界がある。一生懸命に苗木を植えたら、あとは自然の手にゆだねる。人の手には負えない部分があることを、わきまえることの大切さ。外側に向けて開いてゆく感覚こそ、この取り組みが長続きするポイントなのではないか▼思い通りにいかないからこそおもしろいし、また来ようと思う。参加するたびに気づかされる教訓である。(

めぐりめぐる

 イズミが死んだ。小さいころから「岡公園のイズミちゃん」は当たり前の存在で、死ぬ前日に元気な姿を見ていたから不思議な感覚だった。やがて桐生が岡動物園にゾウがいないのが当たり前になって、いつかイズミを見たことがない人ばかりになる。やっぱり不思議▼だけど感情を抜きにすれば、何事もそういうものである。この目は戦争を知らなくて、高度経済成長や東京五輪の熱狂、人があふれて活気づいた“古き良き桐生のまち”を経験していない。その代わりに戦後の平和な時代を、一瞬で遠くとつながる技術のある世の中を生きている。多くの人たちが身近な自然環境に心を向ける今を知っている▼どの時代に生まれて、どんな経験をしたら、より幸せなのかしら。今しか知らない身ではわからなくて、それは誰もが同じこと。生まれる時代も場所も選ぶことができないまま、偶然の出会いと取り巻く出来事、変化を受け止めて生きる。ときに抗って、受け損なっても進む。ただそれだけ▼そんなふうにつらつら考えて、改めてイズミと同じ時代に生きて、死を経験した偶然に感謝する。彼女にまつわる歴史や物語、人々が抱える思いをひっそり胸に刻んでおこうと思ったのだ。(

分割自治体

 一緒になるどころか、“分割仲間”が逆に増えるそうだ。国の審議会が19日に示した衆院小選挙区の区割り改定案。同一自治体に異なる選挙区を抱える桐生・みどり両市のように、分割される市区町数は88から過去最多の105に増えるという▼2014年12月の衆院選を「違憲状態」とした最高裁判決を受け、「1票の格差」(小選挙区の人口格差)是正を最優先した応急措置。自治体を分割しないことを原則に見直し作業を進めるはずが、最終的には分割自治体を大幅に増やす皮肉な結果になってしまった▼その一方で、今回の見直し対象に群馬県は含まれていない。群馬2区(旧桐生市、みどり市笠懸・大間々両町)と同1区(桐生市新里・黒保根両町とみどり市東町)に、それぞれ選挙区が分割されている桐生・みどり両市。地域の一体性が損なわれるとの懸念から、区割り見直しを望む声は根強いが、改定に向けた具体的な動きは一向に見えてこない▼代わりに国会から聞こえてくるのは、相次ぐ閣僚の失言や政務官の女性問題…。「平成の大合併から10年以上たつにもかかわらず、国はいまだに選挙区一つ一緒にする気がない」。そう嘆く両市民の声は届いているのだろうか。(

小さな発見

 日ごろ、地域で動いていて、一通りのことは承知していたつもりだったが、知らないことの方がまだまだ圧倒的に多いと改めて実感した▼仕事で19日、黒保根町に赴いた。国道122号から、下田沢の交差点を左に折れ、県道沼田大間々線を走る。なだらかな上り坂にみえるが、非力な旧式の軽自動車では、ギアを3速に落とさないと速度が上がらない。意外と勾配があるのかと考えながら進むと、春の鮮やかな色彩が目に飛び込んできた▼市道に入って再び国道に抜けるまでの間、何本もの満開の花木が道沿いに次々現れる。ことに見事なのが、枝垂れ桜と桃の共演で、競い合うように咲き誇る桃の赤に近いピンクは強く印象に残る。春の花の代表格の梅桃桜は普通、その順番通り咲くが「年によっては全部が同時に咲くこともあるよ」と、地元の人が教えてくれた。集落の人たちが植えたツツジが、次に見ごろを迎えるという▼帰りに国道沿いの道の駅「やまびこ」で昼食を取った。関東地方の道の駅マップがあったので手に取ると、すぐ近くにこんなところがあったのかと初めて知る情報がちらほら。あちこちの道の駅を目印に、近郊を訪ねても楽しそうだ。(