カテゴリー別記事: ぞうき林

好循環の端緒

 新しい流れをつくり出すきっかけになるのではないか。そんな期待を抱きたくなる動きだ。有鄰館付近の桐生新町重要伝統的建造物群保存地区内に、地場のものづくり事業所が相次ぎ進出予定であることを12日付の本紙で取り上げた▼進出する3事業所は活版印刷、帽子製造、繊維ベンチャーと個性が際立つ。いずれも重伝建地区に出ることを意識し、ものづくりの様子やでき上がった品を見せられる形を取る。まち歩きに訪れる人にとっての楽しみが増えるし、何より地域の魅力が高まるのに直結する▼このエリアに拠点を構えたいと希望する人はほかにもまだいるようで、今回の動きが先駆けになり、高感度のものづくりをする企業や作家の集結につながれば、まち全体にとってもきっと大きな力になるだろう。3件とも桐生市の補助金をすでに活用または予定しており、行政も後押しになっている▼一般的に、美術館や博物館、公園といった文化的な施設が整備されると、その周りにおしゃれな店などが集まってくる。同様の好循環で、重伝建地区への集積が少しずつ周辺に波及し、桐生のまち自体のイメージアップと活性化につながるなら願ったり叶ったりだし、ぜひそうなってほしい。(

ダイス

 その昔、「王様」というアーティストが、ディープパープルなどの歌詞を和訳した曲を歌い、ちょっとしたブームになった。和訳すると何とも陳腐な感じでおもしろがっていたのだが、曲のよさは歌詞うんぬんではないということを認識もした▼ローリング・ストーンズの「ダイスをころがせ」という曲の歌詞も、和訳すると苦笑するような内容だが、そのタイトルとだるい雰囲気で、好きな曲だ▼ダイスという言葉から確率というものを考えてみた。6面体のダイス(サイコロ)を振って1が出る確率は、6分の1(16・7%)。ということは8割がた、1は出ない。1が出るまで振ってみようと、2投、3投…と続けてみる。5投目まで外れ続ければ、「6分の1なのに5回外れたんだから、次こそは出るだろう」と期待してしまうが、6投続けて1の出ない確率は33・5%。3分の1の確率で出ないことになる▼では逆に、3分の2の確率で1が出るかといえば、10投目だろうが20投目だろうが、当たり前だけどサイコロを振って1の出る確率は6分の1。何回振ろうと8割がた、1は出ないのだ▼あらためて考えてみたら、分かってるつもりでも理解していなかった。世の中、そんなものばかりだなと。(

アニミズム

 黒保根体験イベントの取材で亀石の大しめ縄張りに連なった。巨岩信仰で古来から行われている神事かと思いきや、今年で24回目。以前は田沢川にこいのぼりを泳がせてみたが、気流の関係かうまくいかなかったというから面白い▼伝説はこうだ。昔むかし、上流の古谷というところに女亀がすんでいた。大きな魚が男亀からのプロポーズを伝えたところ相思相愛とわかる。嫁入りには鳥や獣たちも総出で、笛や太鼓の鳴り物入りでにぎやかに川下り。今も仲良く相対すると▼60メートルを超す長大な縄をなうところから始まって、みんなで手送りしたり引っ張ったり、渓谷での共同作業には清々しい達成感がある。近くの集会所に移動してはもちつきにバーベキューと楽しさ満載だった▼思い浮かんだのが婚活イベント。夫婦岩の間にしめ縄を張って縁結びするのだ。いつしか子亀も鎮座している地域にぴったりの健全なイベントではないか。東武鉄道のツアーもあり、いろんな出会いが仕掛けられよう▼近くの栗生神社は本殿を埋め尽くす彫刻が素晴らしく、御神木は樹齢1200年というアニミズム的パワースポットである。婚活、したことはないけれど、するならここをお勧めしたい。(

願わくばゼロ

 桐生警察署管内(桐生、みどり両市)の交通死亡事故のない日が、発生から24時間以内の統計上ではおとといで連続4カ月になった。昨年9月14日に桐生市新宿の市道で横断中の高齢者が死亡した事故から仕切り直しての、一つの節目の記録である▼この事故が発生するまでは、管内の高齢者(65歳以上)の交通死亡事故ゼロが連続1000日を超え、丸3年まであと3カ月に迫っていただけに残念でならない▼ただ、みどり市内に限ってみると、おととし12月12日に大間々町上神梅の国道で発生した事故以来なく、きのうで連続400日になった。また高齢者だけでみると、同市内では2014年12月5日に大間々町桐原の県道で発生した事故以来なく、きのうで連続1138日(3年と42日)になった▼県内や全国では高齢者の死亡事故が全体の半数以上を占めているのに対し、管内の高齢者の死者は3年余りで1人というのは奇跡的なことであり、このことが全体の死亡事故の減少につながっているのは言うまでもない▼実際、管内の昨年の交通事故死者は3年連続で統計史上最少タイの2人にとどまった。今年はそれ以下に、願わくばゼロであってほしいものである。(

たほいや

 昔、フジテレビの深夜番組で「たほいや」というのがあった。親が広辞苑にある聞いたこともないような見出し語を選び、子はさも広辞苑に書かれているような説明文を考え、本物はどれか当てあう。大好きな番組だった▼10年ぶりに改訂された広辞苑の第七版がわが編集部にもやってきた。知らない言葉はインターネットの検索で済ませてしまう昨今だが、分厚い紙の辞書にはやはり気分が上がる▼その予約特典として付いてきた「広辞苑をつくるひと」を読んだ。小説家の三浦しをんさんが語釈を検討した人、書体を生み出す人、イラストをつける人、函(はこ)をつくる人、製本する人など「ものすごい知識や技術を持つ、愉快なかたたち」を訪ね、仕事内容から職を選んだ動機、個人の趣味まで踏み込んで書いた楽しい小冊子。苦労を苦労と思わず、楽しそうに語る人たちをうらやましく思った。それにしてもここまで細心の注意を払って出版した辞書にも間違いが出るのだから大変だ▼「当たり前と思う言葉もとにかく辞書を引け」と言った予備校の先生を思い出す。人工知能がどんなに発達しようとも使うのは人間。言葉への感覚を忘れないよう、時には重い辞書を開こう。(