カテゴリー別記事: ぞうき林

虫と猫

 生き物が好きで、昆虫、トカゲ、ヤモリ、カエルなど嫌われがちな類いも平気。ちょっと苦手なヘビだって触れないこともない。だから「『犬猫はかわいがるけど虫を軽んじる』なんて絶対にしないぞ」と自負があった▼2週間前、アゲハの幼虫11匹を預かった。柔らかい葉を与え、まめまめしく世話をする。のそりと動く姿に愛着を持った頃、次々と終齢幼虫に脱皮し始めた。ところがその途中、一番小さな1匹の様子がおかしい。体をくの字に曲げて横たわったまま動かなくなってしまった。どうにかしたくても何もできない▼自然環境で成虫になれるチョウは約1%といわれる。鳥や虫に食べられたり、弱って死んだり。だから外界にいれば、この11匹は1匹も成虫になれないかもしれない▼気が楽になったところで、改めて自問する。例えば同じように拾って2週間世話した猫に対しても割り切れるだろうか。たぶん無理だ。虫と猫。一方はあきらめて、もう一方のためには泣く。果たして何が違うのか。今のところ答えを持ち合わせていないから、根拠のない自負は置いておくことにした▼しばらくして11匹のすみかをのぞき込む。弱ったはずの1匹はのんきにサンショウを食んでいた。(

最後の週末

 名残を惜しむ常連客でにぎわう店内。もうすぐで日付が変わるころだった。ふと見ると、大将が厨房わきの台に突っ伏している。時間にすればほんの一瞬だったろう▼店外には「12時から貸切」の張り紙。日中からフル回転した最後の週末の夜、力尽きたかのように伏す大将の姿を、気付いた常連客が無言で温かく見守っている。なんだか心揺さぶられる光景だった▼桐生市永楽町の老舗すし店「吉野鮨」が先月29日に閉店した。大将の吉田武司さん(75)は桐生高校野球部を甲子園常連にした名将・稲川東一郎監督の四男。球都を愛する人が集う名店が81年の歴史に幕を閉じた▼記念すべき最後の週末に、お邪魔させていただいた。2階を貸し切りにしての新人記者歓迎会。記者として一歩を踏み出したばかりの青年を、後世に語り継がれるような店で歓迎してやりたい。そんな先輩記者の思いにふさわしい舞台を整えていただいた▼2階での歓迎会が終わった後も、1階の常連客に声をかけてもらい、日付が変わるまで名残を惜しむ。「一生忘れない歓迎会になりました」と礼を言うと、「そう言ってくれるとうれしいねえ」と笑顔で語ってくれた大将。本当に長い間、お疲れさまでした。(

美術館・図書館

 東武太田駅北口に新しい文化施設が開館した。太田市美術館・図書館だ。ロゴ問題に続いて愛称「おおたBITO」も使用を断念したため長い正式名称で呼ぶしかないが、施設自体はお役所的でなく明るく開放的。周囲や屋上の植栽が根付き芽吹くように、これから成長していくのだろう▼開館記念展は「未来への狼火」。美術館展示室は1階から3階まで。狭さは否めないが、さざえ堂のように右まわり3回の巡礼か、外階段やスロープをたどると二重らせん構造か。初見では玄室を内蔵する円墳のようにも感じられた。建築そのものが面白い▼図書館スペースとの融通性もあり踊り場や行き止まり部分や外のデッキなど各所におしゃれな椅子が置かれ、だれもがゆったり過ごせる。制服姿の高校生が参考書を開いていたり、風に吹かれながら散策して伸びをする中高年、絵本を囲む子ら、待ち合わせの若者たちも▼駅も新しくなって、荒廃感強い南口とSUBARU御殿そびえる北口、シュールな対比の周辺がどう変貌するかもお楽しみ。人ごとのようなのは、新図書館の貸し出しは太田市在住在勤在学者に限られるから。書棚が埋まるころには既存館同様、県内両毛にも広がるといいな。(

火の用心

 「火の用心 ことばを形に 習慣に」。先ごろ発表された、今年度の全国統一防火標語である。子供のころからよく見聞きする、耳にたこの言葉だが、注意を怠って火災になるケースが後を絶たない現実に警鐘を鳴らしている▼桐生市消防本部によると、管内で昨年発生した火災の原因1位はたばことたき火で、それぞれ7件。3位は放火・放火の疑い(6件)だが、4位にもこんろ(4件)がランクイン。たばこ、たき火、こんろの不注意による出火は全体の3割弱を占めたことになる▼今年の火災は26日現在で19件に上るが、うち野火などの「その他火災」が約半数の9件を占めている。多くはたばこの投げ捨てやたき火が原因とみられ、その責任は重い▼同本部は、たばこの投げ捨てをしないのはもちろん、必ず灰皿のある場所で吸う、灰皿は常に水を入れ、その場を離れるときは火を消す、吸い殻は水をかけてから捨てる、寝たばこは絶対にしない、廃棄物の屋外焼却はしない―を呼びかけている▼つけ加えるなら、火災予防だけでなく、環境美化のためにも吸い殻を捨てないことが一番いいわけで、街でも山でも携帯用の吸い殻入れを持ち歩いてもらいたいものだ。(

初めての御朱印

 先日、鎌倉の旅に御朱印帳を持参した。約1年前、富士山本宮浅間大社で初めて手に入れたもの。なかなか機会がなかったが、今回は5寺社で御朱印をいただくことができた▼御朱印の存在を知ったのは高校の修学旅行。友人の一人が集めていた。しかし、深く知ることはなく、大人になった。あれから二十数年。夏休みには「行ったことのない県巡り」を繰り返してきた。もう少し早く始めていたらと思うが後の祭りである▼もともとは納経の証しとして、現代では多くが参詣の証しとして授与される御朱印。ブームとは聞いていたが、観光客でごった返す鎌倉大仏の高徳院や長谷寺はもとより、極楽寺などでも御朱印を求める人がひっきりなしに現れ、それを実感する。勝手が分からずどぎまぎする記者の脇を若い女性たちがスマートに次々通り過ぎていった▼旅から戻り、御朱印帳を開くと、寺社の風景が浮かんでくる。いい旅の記録となった。御霊神社では七福神巡り用の別の御朱印があると恥ずかしながら現地で知った。御朱印集めはスタンプラリーではないというが再訪する動機のひとつになるだろう▼桐生でも宝徳寺のアート御朱印が人気と聞く。まずは足もとから見つめ直すのがいいか。(