カテゴリー別記事: ぞうき林

桃源郷はどこへ

 ピラミッドタワーを築き上げ、今度は異民族の来襲を防ぐ万里の長城。次はどんなカードを切って出るのか。それも面と向かってではなくツブヤキとあっては、とても腰を据えて説得する相手とは思えない▼現実から離れて心を遊ばせるには、長編小説だ。数年前「テンペスト」ではまった池上永一さんに、今度は100円文庫本でつかまった。上・下巻ある「レキオス」を読了し、今は「シャングリ・ラ」下巻を夜な夜な惜しみつつページを繰っている▼沖縄・那覇出身の作家は琉球王朝や基地の島を縦横無尽に疾走、息をつかせない展開で翻弄してくれる。レキオスはポルトガル語で琉球人のこと、桃源郷の意味のシャングリ・ラも当然沖縄が舞台と思いきや意外。地震で打ち捨てられたあと森林化と高層化に二極化する未来都市・東京だった▼主役級はゲリラの総統も世界経済を操るハッカーも深窓の幼帝も狂気の博士も女、それと優しく悩ましいニューハーフたち。血みどろで荒唐無稽でも、戦闘では国連ルールを厳然と守る。しかし二酸化炭素削減のための森林が狂暴化し都市をのみ込む▼終末時計の針が30秒進み、滅亡まであと2分半となった。いえいえこちら現実、米科学誌の発表だ。(

赤城山麓行

 寒中らしい厳しい冷え込みもようやく峠を越え、しばらくは高気圧に覆われて、日中は3月並みの陽気になるというから、一気に肩の力が抜けるような、そんな感じがする▼先週、「大寒」の被写体となる氷瀑を求めて赤城山の登山口にある利平茶屋森林公園(標高約1000~1100メートル)に出かけた。強い寒波の影響で平地でも降雪があった直後で、念のために冬用タイヤの車に乗り換えて向かった▼公園まで続く坂道は、いつもなら積雪と路面凍結のため途中までしか登れないのだが、今年は意外にも終点まで楽々。と、喜んだのもつかの間。長靴に履き替えようとトランクを開けてがくぜん。乗り換えた車から持ってくるのを忘れてしまったのだ▼ぬかるのを覚悟で強行したが、20センチほどだった雪は30センチ、40センチと深くなるばかり。案の定靴の中もぬれだして、再び迷ったが、気持ちを入れ替えてイチニ、イチニ。行楽期なら15分ほどでたどり着くところを約70分もかかり、ようやく到着。しかし、氷瀑は大半が雪に埋もれ、いてつきもいつもより弱かった▼代わりに掲載した、岩清水の氷柱も以前より小ぶりで、暖冬傾向を実感。ま、それを確認できたのも収穫だったかな。(

進化する道具

 県立歴史博物館で開催中のテーマ展示「道具の教室」。明治から昭和にかけて生活の中で使われた道具を紹介するもので、黒電話やローラー付きの電気洗濯機、木製冷蔵庫などが並び、〝進化〟をたどることができる▼「ほとんど形が変わらないのはアイロンです」と館の職員。確かに明治時代、外国から入ってきたという炭火アイロンはすでに前部がとがり、後部が平らな「ロケット型」をしている▼では一番形が変わったのは何だろう。電話機だろうか、洗濯機だろうか。洗濯板は原始的な道具にみえるがこれも明治時代に外国から入ってきたもの。もみ洗いをしていた人々にとっては画期的な道具だったという▼「よりよく暮らしたい」というヒトの願いが生み出す道具の最終形は「ロボット」になるのだろうか。ヒトに代わって家事をし、車の運転もしてくれる。育児も介護も仕事もロボットの方が効率がいい場合があるだろう。ゲームの相手もしてくれるし、いずれは芸術家や小説家も生まれるかもしれない。そんな未来がやってきた時、ヒトは何をすればいいのだろうか▼とりあえず、いくつかの道具に助けてもらいながら、きょうもこの手を使って、ご飯を作ろうと思う。(

シティプロ

 今季、雪が2度降ったと思う。私の住んでいる足利は地面が白くなることはなかったが、桐生市内勤務の人が車の屋根に雪を積んできた。わずかな距離でずいぶん違うものだ▼シティプロモーションに力を入れる足利市。20日にキャッチコピーとロゴマークを発表した。キャッチコピーは「素通り禁止! 足利」。「面白い!」とかなり強烈なインパクトを受けた。ロゴマークは赤のハートマークが目を引き、すんなりと入ってくるデザインだと思う▼「素通り禁止!」には足利には魅力がたくさんあることから「素通り」させないことや市民自らが「素通り」されないまちづくりへの取り組みを行う、地域のことを「素通り」せず関心を持とうという思いを込めたということだ▼全国自治体はPRのため、キャッチフレーズやキャッチコピーをつくっているが、個人的な受け止め方もあると思うが、これだけ面白いのは見つけられなかった。すでにキャンペーンサイトを立ち上げたり、缶バッジやピンバッジなども作製、配布。飲食店で使ってもらうコースターも作る予定。市議会からも市境にロゴマークを使った看板を早く立ててなどの意見があったそう。今後の展開を楽しみにしている。(

真冬のチョウ

 大寒をすぎた日曜の夕暮れどき、まちなかのガソリンスタンドで、1羽のチョウが羽ばたいているのに気付いた。高い天井付近に並ぶ照明の光を渡りながら、羽を小刻みに震わせ、飛んでいる。時間にして5分ほど、こちらの給油作業が終わるまで、一度も羽を休めることはなかった▼あれは何というチョウだったのか。時折のぞいた羽の表には、淡いオレンジ色の配色があったようで、タテハチョウの仲間なのかもしれない。それにしても、真冬のこの時期、深夜から夜明けに至るまでの厳しい寒さを、いったいどこで、どうしのいでいるのだろうか▼こうして生まれた疑問を投げ捨てることなく、あるいは書物やネット上で回答を探し求めてしまうのでもなく、そのまま観察し続けることができたならば、チョウへの関心はより深まるだろうし、新たな関係性が見えるのかもしれないと、残念に思った▼疑問という穴が開いたとき、穴をどう埋めるのか、方法はさまざまだ。誰かが見つけた回答を探して、穴をふさぐのが一番簡単。でも、それではひとときの喜びにすぎない。疑問は疑問のままにとどめ、自分で調べてみたいものと、真冬のチョウを思い出しながら、続きを探している次第。(