カテゴリー別記事: ぞうき林

探究心の結晶

 桐生球場の外野フェンスに、ピッチングマシンメーカーの名前が新たに加わった。発足したばかりの新法人「スポーツギア」が、地域での存在感を高めたいと広告を出した▼開発に心血を注いだ新型機は優れものだ。投手がボールを投げるときに用いる基本の指は親指、人さし指、中指の3本。マシンも同じ原理で、三つのローターの回転で球に変化を加え、ほぼ全ての変化球を投げ分ける▼仕様上の最速は160㌔だが、実は世界最速の大リーガー・チャプマン並みのスピードも動作テスト中に記録した。投球パターンをコンピューターに記憶させ、特定の投手を模すこともできる▼高校での実践練習を念頭に作られた機械だが、プロのパターンを入力すれば、憧れのピッチャーとの模擬対戦もできそう。実際、売り先にプロ球団も見据える。タブレット端末で遠隔操作できる機能はテレビで人気の「リアル野球盤」に向く気がする。用途と販路の広がりも期待が持てる▼ピッチングマシンにIT(情報技術)をいち早く導入した同社。社長らに「将来はAI(人工知能)で投げそうですね」と水を向けると、都内で開かれた人工知能展を見に行ったばかりだと笑った。探究心の強さに恐れ入った。(

情報統制

 ノーベル賞を受賞したからといって良い人かどうかは分からないが、少なくとも世界的な功績があった人、とはいえるのだろう▼中国の人権活動家でノーベル平和賞受賞者の劉暁波氏が亡くなった。伝え聞くところによると、十分な治療は受けられたとはいえず世界的に批判が集まっているが、中国政府は「内政問題」として意見をはねのけている。その後の対応も、秘密警察が同席した簡単な葬儀、埋葬せず海へ散骨、政府への感謝の言葉を述べる兄の会見には政府関係者が同席し質問を受け付けず、一部の親族にはすべてが終わった後知らされる…と、徹底した統制のもとで進められたらしい▼市場開放やら爆買いやら、経済的に自由主義的な面が拡大したと思っていたが、やはり根幹は社会主義なのだなと再認識する。何よりもそれを強く感じるのは、情報統制。人ではなく組織が優先される社会では、言いたいことも言えない、事実を知らされないということを、今回の件で改めて知らされた▼統制されるよりもたれ流す方がまだ、ましか、とは思うが、テレビのチャンネルを変える中で一瞬映る某女優の呪いのような動画を紹介するワイドショーの画面を見ると、少し自信が揺らぐ。(

テクノロジー

 世界ALSデーの6月21日に発表されたばかりのファッションブランド「01」。障害を抱える人も健常者も性別も超えて快適にカッコよく着られるボーダーレスウエアで、上質な黒のスエット素材。ジャケットのボタンはマグネット式で、右手首にカードを入れるポケットがつくなど機能性も高い▼まだ有効な治療法がないALS(筋萎縮性側索硬化症)発症後もクリエーターとして活動し続ける武藤将胤さんが開発。笠懸南中の茂木克浩教諭との「ライフデザイン」プロジェクト発表会で、自身も「みんなに刺激を受けた」と披露してくれた。生徒たちは興味深々、羽織ってポーズする男子も▼人は自らの意思で0から1を生み出すことができる。世界を変えられる―。電動車いすWHILLのシェアを開始。最後まで残る目の動きを生かしてJINSとメガネを共同開発、ライブで音楽と映像を操る。ロボット「オリヒメ」も分身だ▼障害を持つ人たちの行動と表現の自由を求めて活動する武藤さん。全身の筋肉が衰えていくなか、前向きにテクノロジーを駆使する。京大iPS細胞研究所でのALS治療薬開発研究も進んでいるというが、スピードアップを願いたいと、切に思う。(

世代を超えて

 30年にわたって愛され続けているゲーム「ドラゴンクエスト」。1986年発売の1作目を遊んだ子どもたちも、いい歳になった。ファンファーレから始まる序曲に自らの冒険を思い出す人も多いだろう。シリーズは10作を重ね、今や親子2代で楽しむ人もいる▼印象的な音楽は作曲家・すぎやまこういち氏による。ザ・ピーナッツ「恋のフーガ」などを手がけた昭和のヒットメーカーで、耳に残る「キリンレモン」などのCM曲や東京・中山両競馬場の楽曲も同氏のものだ▼世の中の「ゲームなんて」という風潮。86年当時すでに55歳、若いドラクエ制作チームとの初顔合わせでは「なぜ大御所が」と警戒された。ところが誰よりもゲームに詳しく、若者たちを驚かせた。シナリオ堀井雄二氏の人間味ある物語世界をよく理解し、音符の数が極めて少ない、当時のいわゆるピコピコ音で中世ヨーロッパを思わせるクラシック系の音楽を実現。草原の広さ、その広野を行く主人公の不安や孤独を感じさせるメロディーが遊ぶ人の心に残った▼86歳のすぎやま氏は昨年、最高齢でゲーム音楽を作曲した作曲家としてギネス世界記録に認定。29日に発売されるドラクエ11作目には新曲が40曲近くもあるそうだ。(

ヒアリの行方

 国内各地でヒアリ発見の報告が相次ぐ。兵庫県尼崎市、神戸市、愛知県弥富市、大阪市、さらに東京都の大井ふ頭と、港湾のコンテナ内などで次々と見つかっている。新潟県長岡市で見つかったヒアリらしきものは、ヒアリではなかったようだが、すでに内陸にまで拡散していても不思議ではない▼環境省の資料「ストップ・ザ・ヒアリ」によると、ヒアリは南米中部原産で、体長5ミリ前後。赤茶色をしており、腹部は赤黒い。「毒性が強く、毒針で刺されるとアレルギー反応で、場合によっては死に至ることもある」とも記される。ヒアリは「火蟻」で、火傷のような激しい痛みを伴うことが、その名の由来だという▼小さな生物の移動には、人の営みが深くかかわる。居心地のいいコンテナで暮らしていたら、そのまま船に積み込まれ、海を渡って異国に到着。さらに列車に揺られ、いつの間にか内陸へと足を延ばす。そこが繁殖に適した環境ならば、生息地になるだろう。人にとってもアリにとっても驚きの展開だ▼米国、中国、台湾などではすでに生息が確認されている。経済活動が盛んになればその分、こうしたリスクは高まる。いつもと違う生物の存在に気づくためにも、日々の観察が大切になる。(