カテゴリー別記事: ぞうき林

電脳の世界で

 東京からの帰路。熊谷駅で新幹線が停車した。次の停車駅の高崎駅で終電の両毛線に乗り換え、桐生駅へ。楽しかった旅ももうすぐ終わりを告げる▼しかし、定刻を過ぎても列車が動きださない。一つ先の本庄早稲田駅で上りの新幹線が異音を検知し、「確認作業をしています」というアナウンスが流れた。結局、新幹線は1時間以上動かないまま。1年に1度あるかないかという新幹線での人身事故だった▼アナウンスを聞いた時点ですぐに動きだし、在来線に乗り換えれば終電に間に合ったかもしれない。だが、電池残量がわずかとなったスマートフォンでは検索もままならず、どちらが有利か分からないまま、ちゅうちょしてしまった。いまからでも前橋駅にはたどり着けそうだったが、結局、熊谷駅まで家人に車で迎えに来てもらうことにした▼東京都心で観測史上初となる積雪を記録した24日、東京電力が節電への協力を呼びかけた。暖房の需要が高まり、午前11時台に電力使用率が95%に達したという。計画停電の夜を思い出した▼もしいま、電気が使えなくなったらどうなるだろう。5年前の3月、考えたはずの問い。答えの出ないまま、忘れて日々を過ごしていないだろうか。(野)

癒やしの光

 きのう、雪が降った。本当に雪が降るとは、と思った人も少なくはないと思う▼18日から23日に かけて、私の取材エリアである足利市ではイベントがてんこ盛りだった。栗田美術館での三大陶器まつり、あしかがフラワーパークでのグルメグランプリ 、市内各所での文化財一斉公開、足利銘仙を着てまち歩きを楽しむ楽ジュアリーツアー、史跡足利学校 を中心とした足利学校さままつり、ほかにもたくさんのイベントがあって、大忙し。1カ月分くらい歩いた気がする▼23日、最後に待っていたのは足利工業大学生と足利短期大学生6人による「竹あかり 」。発光ダイオード(LED)をさまざまな大きさや形状に切った竹に仕込んで、演出する光のイベント。足利学校近くのポケットパークで行われた▼1カ月ほど前、実施が本決まりになったということでLEDの買い出しや竹の加工など本番前の作業は大変だったという。青色LEDを並べて渡良瀬川、さらに赤や黄色のLEDで紅葉も表現した。LED調 整担当の学生は3日徹夜したそうで、美しくあかりが灯ると「よかったあ」と涙声。若者が感動している姿をみるのはいいなあ、とこっちも感動。6日間の疲れを忘れさせてくれる光だった。(ほ)

移動の手段

 自転車で桐生川沿いを下る。県境の橋を渡り、栃木県に入ると間もなく渡良瀬川と合流する。河畔林にツグミやヒヨドリ、カラスといった鳥たちがにぎやかだ。上空にカワウの群れも見える▼道端に立て看板が現れる。特定外来生物を防除するために作業をしているという説明書きがある。防除の対象はオオキンケイギクとアレチウリ。花の季節が終わり、種子を結ぶ前に取り除くのだという。初夏、河川敷に咲いていた鮮やかな黄色い花々を思い出した▼環境適応能力が高い外来生物は、日本固有の生態系を乱すおそれがある。人間の身体や、農水産業への悪影響も考えられる。頭では理解できるのだが、散歩をしながらオオキンケイギクの花をめでたりしていた身としては、割り切れない気持ちも残る▼外来生物はどうやって海を越え、ここまでたどりついたのか。人間が運んだものもあれば、渡り鳥が運んだり、海流などに乗って漂着したりと、ルートは無数だ。荷物を下ろした貨物船のバランスを取るために使う海水にまじって旅をする生物もいるという話も聞く▼自分自身、自転車についた植物の種子をいつの間にか運んでいる可能性もある。生物それぞれに、生き残りの戦略はしたたかだ。(け)

嫌いになれない

 寒いのが苦手だ。手足が冷たくなるし、治ったはずの古傷がぎしぎしするし。服を着こめば体の動きが鈍って温まらない悪循環。それでもこの季節を嫌いになれないから、困ったもんである▼ぐっと冷え込んでからこっち、星がきれいな夜があって、白い息を吐きだして見上げた空は季節がゆくのを教えてくれる。カペラにアルデバラン、リゲル、シリウス、プロキオン、ポルックスをつなげば“ダイヤモンド”ときらびやかな名がつくけれど、その六角形はどうにも亀の甲羅に見えて仕方なくて、空をのっそのっそと歩くさまを想像しては笑った▼ゆるりと通る風は冷たくて、乾燥しているのに少し湿っていて、優しい夜の匂い。空気が冷たいから美しく見えるものがあって、好きなものがある▼そうそう、えびす講の日に祖母がふるまうけんちん汁も楽しみの一つ。煮込んで寝かせて丸一日。しっかり味がしみ込んだ野菜に、ほろほろ崩れた豆腐、やけどしそうに熱いこんにゃくが魅力。はふはふ言いながら食べると、のどまでやけどするようで、季節を実感する▼十五夜にも十三夜にも作るけんちん汁。材料も作り手も同じだけれど、やっぱり一番おいしいと思うのは今時分なのだ。(並)

3年連続の重み

 もう14年前になる。2002年のこと。桐生市役所で不祥事が相次いだ▼4月に事業担当助役が公然わいせつ容疑で逮捕。5月には建設部職員による市営住宅敷金の着服が発覚し、9月には経済部職員が覚せい剤取締法違反容疑で逮捕された▼先輩記者とともに桐生市政を担当していた当時、市役所に家宅捜索が入る場面を何度も取材した。わずか1年足らずで3人の逮捕者を出す異例の事態だった▼今月19日に同市職員が栃木県迷惑防止条例違反容疑で現行犯逮捕された事件。14年6月の列車内盗撮、15年7月の酒酔い運転に続き、3年連続で市職員(臨時職員含む)の逮捕者が出た。再び相次ぐ不祥事に、古い話を思い出した▼今回逮捕された職員は4月に新規採用、試用期間を経て10月に本採用され、9月末には公務員としての行動について研修を受けたばかりだった▼個人の資質の問題であることは否めないが、繰り返されれば組織の問題が問われる。「常に公務員としての自覚を持ち続け、職員としてふさわしい行為かどうか、自ら主体的に判断して行動を」。繰り返される職員向けの通知が“絵に描いた餅”になってはいないか。3年連続の重みをしっかり受けとめてほしい。(針)