カテゴリー別記事: ぞうき林

給食無料化

 みどり市が人口減対策の目玉として、4月から学校給食の無料化に踏み切る。年間2億円強を投じ、市内の小中学校の児童生徒約4300人の給食を所得制限なしで完全無料にするもので、アレルギーで給食をとらない子にも食材費相当を補助する。子育て世帯の負担軽減を図るとともに「食育」という側面も持たせるという▼県内では上野村や嬬恋村などで実施済み、12市では渋川市も新年度から実施の方針。桐生市は第3子以降の給食費を補助している▼実施を控え、市議会では「基本的には賛成」としつつ、いくつか注文も出ている。特に多いのが滞納給食費の対策。市教委によると今年度だけで292世帯の約624万円、過年度分を含めると累計1730万円もの滞納がある。無料化で滞納世帯の“食い逃げ”を許すことにならないか、と▼人口減や「子どもの貧困」が社会問題化する中、給食無料化という政策は今後、高校無償化や医療費無料化と同様に広がる可能性もある。そうなったときにみどり市の優位性は保てるのかという疑問もある▼給食無料化は、保護者が担ってきた子どもの食費を市民全体で負担する大転換。「ただより高いものはない」とならないよう、慎重な議論が必要だ。(

いつもの笑顔

 笑みを絶やさないその人は、電話の声も穏やかさを含んでいる。仕事上の付き合いで、公の場でしか会わないから、本当のところは知らないけれど、「平らな道を歩いてきた人」という印象だった▼変わったのは、その人が自殺予防講座の講師を務めたとき。社会福祉士として登壇し、一般的な講演と同じくモデルケースをもとに解説する。ただ違ったのは、本人の体験を事例として紹介したことだった。自殺を図った父親について、取り巻く家族について、経験を語る▼生々しく、激しい内容なのに口調は淡々と、ときにユーモアを交えていた。専門職としての務めだから当然なんだろうけれど、自らの体験と感情をさらけ出す強さ、そのうえ過去の自分に同情しない客観的な姿勢に、尊敬しかなかった。穏やかさのなかに、計り知れない経験をのみ込んだ強さが入り交じっているのだと知った▼いつも笑顔の人だって、常に表情そのままの状態にいるわけがなくて、逆もまたしかり。せわしない毎日では、こんな当たり前のことも忘れてないがしろにしがちだけど、大切にしていたい▼講演の後、「何をのみ込んでも消化して、できれば笑顔を絶やさずに」。自分を省みて、そう思ったのだ。(

遺志

 あのとき彼は逃げなかった。地元で小さなガス店を営み、ライフラインを預かる立場。だれかがやらねば進まない。ひとけのなくなったまちで、そんな仕事に奔走する日々。東日本大震災の原発事故直後。もう6年も前のことになる▼一枚の写真がある。主のいなくなったビニールハウスで、彼が飄々と花の苗に水をまいている。幼いころから慣れ親しんだ思い出の花農園。避難した一家が戻るまで手入れを続けた。のちに再開した花農園の主は、「アイツがいたから」と涙した▼いわき市の出身・在住。最愛の妻と2人暮らし。世話焼きで人懐こい性格。どこへ行っても、だれと会っても、方言丸出しで、だれからも好かれた。そんな彼が2月26日付の地元紙に載った。「バイク転倒、男性死亡」。言葉が出なかった▼3年前、ある集まりで一緒に幹事をした。参加者に配ったメッセージ集に、彼は妻と綴った一文を投稿した▼「『こころのなか』にある面倒なことに、手を伸ばそう。それは、とても厄介なものだ。手を付けると、もう引き返せない。悩んで、迷って、もがいて、涙目になりながら、立ち向かっていこう。大丈夫、ここにいるみんなは、その姿を笑ったりしないよ」。合掌。(

雛たちの宴

 春高楼ではなく恒例の、花の宴。毎年真っ先に味わうのは目黒雅叙園百段階段の雛まつりで、絢爛豪華な七つの部屋に今春は九州各地の雛たちが集められた。ロビーには宮崎県綾町の風習という雛山。山の神への祈りを込めた造形を築いて雛たちが飾られていた▼筑豊の炭鉱王、伊藤伝右衛門邸の座敷雛は圧巻。博多山笠や京都祇園や青森ねぶた、各地の祭りに舞い踊り浮かれる熱狂の絵巻だ。かたや伝右衛門への絶縁状を公開して伊藤邸を去った柳原白蓮の有職雛も。出奔5年後に雛と再会した白蓮は頬ずりして喜んだという▼雛には厄払いの流し雛のような信仰系と、子どもの相手の愛玩系、そして飾って見る鑑賞系の3種類があるという。持てる人形を総動員して段飾りの下に並べ、内裏さまたちを御殿から出して身分国籍差別なく遊ばせていた幼きころは、愛玩と鑑賞の区別もなかったが▼どの系にしても、ひとがたである。人の身代わりとして情を宿す。代々受け継がれた人形ほど、さまざまな思いを注がれる。澄まし顔の奥にほのみえる複雑さがたまらない。全国各地で町なか雛まつりが盛んになった。期間限定、人生も有限。いつかゆったり、巡り歩きたいものだ。(流)

奇跡よ続け

 「今までは験を担いで、節目を迎えても取り上げなかった。が、ジンクスを恐れず、逆に取り上げることでの効果を期待して、変節のそしりを覚悟で記してみた」。これは、おととし10月7日付のこの欄で、桐生警察署管内(桐生、みどり両市)の交通死亡事故ゼロの連続日数が100日になったことを取り上げた時のあとがきである▼残念ながら、この記録は昨年7月29日に、みどり市笠懸町で発生した踏切死亡事故で、400日目前の396日で途切れてしまったが、桐生市内だけでみると、その後もゼロ記録は続き、今月17日で600日になった。また管内でも、65歳以上の高齢者に限ってみると、ゼロ記録は同日で800日になり、その後も続いている▼特に高齢者は、県内や全国的にみて交通事故死者に占める割合が約5割と非常に高いだけに、管内のこの記録は、これまでも何度か触れているが、奇跡と言っても過言ではあるまい。当地の新たな誇るべき記録である▼ここまで来たら1000日も夢ではなくなってきたが、とりあえずは次の大台である900日を目指して、どちら様も、一日一日、「安全は小さな注意の積み重ね」を実践していってほしい。(ま)