カテゴリー別記事: ぞうき林

だのに、なぜ

 まだ暑いかな、と思ったけれど、夜中に起きて、毛布を一枚出して、上に掛けた。朝起きると、ふとんからなかなか抜け出せない。9月も終わり、そんな季節なのだなと、ぬくぬくと心地よいふとんの中で思った▼すごしやすい、いい気候になってきた。動きやすく、食欲も出て、葉は色づく行楽シーズンでもある。観光地などはいよいよ書き入れどきだ▼そんな時期に、解散・総選挙。全国紙で一報があった後、ものの1、2週間。寝耳に水である。森友・加計問題もあやふやで、北朝鮮情勢も不安定な中、大義は「消費税10%の振り分け先」だとかなんとか▼内閣が実質的に解散権を持っているとはいえ、持っているから使わなければならないわけではなかろう。代議士には任期もあるのだし。与党としては「今が勝てるタイミング」と踏んで決めたのだろうが、よりによってこんな時期に、と思う▼仕事柄、人並み以上に国政に関心があるとは思っている。選挙や投票が大事であるということも分かっている。ただ、それだけで社会は成り立っていない。経済や趣味、娯楽なども大事な要素である▼すごしやすい季節が、せわしなくなる。仕方ないとはいえ、恨み言の一つも言いたくなる、そんな秋。(

光の布たち

 まろやかにころがる玉露の甘み。小池魚心の版画や秀島由己男の「霊歌〈影〉」に見守られ、世界各地の民族資料や布や本たちに囲まれた空間低く、新井淳一さん自らつぎわけてくれる茶のあたたかさを忘れない。不世出の「夢織人」だった▼1994年から2年余、50回にわたって本紙に連載してもらったエッセー「縦横無尽」は、スウェーデンから始まって欧米、豪、印、韓国と地球を回り、展覧会や講演や技術指導などで新井が最も多忙だった時期だ。思索の深みをファクスの文字から必死に読み解ろうとした▼桐生市市民文化会館の建設も渦中にあった。新井の旗振りに盟友シーラ・ヒックスやピーター・コリンウッドも駆け付け、多くの市民の協働で未来への宝が生み出された。世界最高峰のテキスタイルアートがここに掲げられたのだ▼人は産着から死出の装束まで、布に包まれる。新井は民族衣装に魂を揺さぶられ、金銀糸は機屋3代のつきあいといい、「伝統を知らずして何の先端か」と啖呵を切った。桐生人としての誇りは、生きた産地のただ中に開かれた染織美術館の希求に直結する▼中国の個展会場では、「私は光を染めたい」と語った。未来は私たちの手の中で育まれるのだ、と。(

その横断危険です

 桐生市新宿の市道中通りで今月14日夜、信号機や横断歩道のない道路を横断中の高齢女性が左から来た乗用車にはねられ死亡した。桐生署管内としては高齢者の交通死亡事故ゼロ1000日を今月5日に達成した直後だった▼警察庁の分析によると、高齢者の道路横断中の死亡事故で、左から来た車にはねられるケースが、右から来た車とのケースの2倍以上に上り、道路を半分以上渡った所での事故が多いという。新宿の事故もそうだった。左から来る車(ドライバーは右から渡る歩行者)は奥の車線になるため、距離感を見誤ってしまうらしい▼長野県警の調査によると、高齢者が道路を「横断できる」と判断する車との距離は約100メートルで、それだけあれば大丈夫と思ってしまう。しかし、車が時速50キロの場合、約7秒後には目の前にきてしまう。道幅が8㍍で、安全確認の1秒後に横断を始めると、約6㍍渡った地点で衝突してしまうという。過信は禁物だ▼やはり道路を横断するときは信号機や横断歩道のある交差点を渡るのが一番。そして夜間は明るい服装や反射材の着用を心がけること。ドライバーは運転に集中し、夜間の前照灯はハイビームの活用をお忘れなく。(

高校生の主張

 “雨漏り”どころではなく、“雨降り”中の教室。それでも、ここを部室として使う演劇部員はみんなで傘を差し、楽しそうだ。そんな日常を新聞の高校再編のニュースが引き裂く▼県高校芸術祭演劇部門東毛地区大会のトップバッターを務めた桐生南高校の「雲量ゼロ、快晴。」の冒頭場面。全国大会に出場し、もうすぐ無くなってしまう母校の名を刻みたいと奮闘する演劇部員の姿をコミカルに描いた作品だ。終盤にほろっとさせられたのは同じく統合される学校の卒業生だからだろうか▼大会直前、今年の全国大会の様子をテレビで見た。最優秀賞は兵庫県立東播磨高校の「アルプススタンドのはしの方」。高校野球の応援に借り出された高校生の複雑な思いを描いた作品だった。高校演劇には高校生が今を演じることで生まれる特別な力がある。桐南の作品は顧問の作のようだが、現役生の生の声を少しでも感じられて良かった▼今回は観劇できなかったが、来年1月の関東大会への出場を決めた桐生高校、11月の県大会へ駒を進めた桐生商業の作品も見てみたい▼そしてできることなら、桐南の作品もブラッシュアップしてどこかで再演し、「今」の気持ちを残してほしいと願っている。(

結んでほしい実

 台風が過ぎて、すっかり秋。日差しが強くても木陰に入ると心地いい▼桐生もそうだが、足利市も雰囲気のある古民家が多い。これらを修理・保存、活用してまちの活力を生み出そうという取り組みが1、2年の間、盛んになってきた。ある民間団体は市と協働し、持ち主の理解と協力を得て、さまざまな活用方法を模索していたり、古民家の実態を把握するため調査を行っている。別の民間団体では活用するため、掃除をしたり、所在マップを作ったり、また別の民間団体は古建築のカルテをつくろうと計画を立てている。大学生が古民家を活用したアートプロジェクトに挑戦もしている。加えて、近代化遺産の保存・活用を考える民間グループも活動している。古民家を見る、入る、そして探検する、は自分の嗜好にもあっているので、つきあいも多くなり、楽しませてもらっている▼最も多く活用されているまちなかの古民家は落ち着く。特に障子などに使われているガラスがいい。表面の微妙なゆがみが美しくて、とりこになる。よく割れずに残っていたな、と感謝したくなるほど。「残す」と口にするのは簡単だが、実際はとても難しい。それぞれの活動が実を結べばと強く願っている。(