誤報の臨場感

 満面の笑みで紙面を飾る「格闘技ゲーム世界一」の男性は、実は大ウソつきだった―。太田市の元臨時職員(23)が「パリで開かれたゲームの世界大会で優勝した」との記事が、9月27日に上毛と朝日の両新聞に載り、翌日、両紙がそろって「事実無根だった」と訂正し、おわび記事を載せた▼事後報道によると、この一件は太田市当局が情報提供し、男性を記者会見に出席させた。だが後で確認すると、パリにも行っていなければ、パスポートもないことが判明。男性は「周囲に行くと言った手前、引くに引けなくなった」。情報提供した上司は「見る目がなく、だまされてしまった」と話したという▼こうした“虚報”が出るたびに「なぜウラを取らなかったのか」との批判が出る。だが通常、公的機関が報道発表する事柄を最初から虚偽だとは考えにくい。会見に同席した産経の記者も「後日、ひとモノ(人物紹介)で書こうと思っていた」とし、他紙もたまたま難を逃れただけなのだ▼2012年10月の読売「iPS心筋を移植」の大誤報も記憶に新しい。同じ報道の現場にいる者として、誤報は人ごとではない。確認を怠らない姿勢と、「これは怪しい」と察する嗅覚を磨くしかない。(成)

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