春のきざし

 晴れたある日、風は冷たいけれど日差しがじんわり。休耕田からはクルルクルルクルルと大合唱が聞こえる。ヤマアカガエルが命を懸けて雌を呼んでいた。また別の日。星が瞬いて、しんとした夜だった。突然、どたんばたんとトタン屋根をたたいて、なああなああと声が響く。町をゆくネコもまた、誰かを呼んでいた▼季節がうつりゆくなあ、なんてしみじみして、はっとした。支度をしなきゃいけない▼とはいえ、洋服を出すのでもなく、コートや毛布をしまうでもない。それはまだ早い。「越冬さなぎ」の処遇である▼わが家には昨秋からお世話しているアゲハのさなぎが2頭いる。10月後半にさなぎになって、うまくいけば冬を乗り越えて羽化する。屋外同様に冬を経験してもらおうと寒い部屋においていて、忘れかけていたのだ。慌てて確認すれば、まだ穏やかな眠りについているようで一安心。まだ早すぎるもの▼とりあえず、いつ羽化のきざしがあってもいいように毎朝、観察することにした。少し温度の高い日があると気になって、わくわくそわそわと朝に晩に様子をうかがう。新しい季節が待ちきれないのは生き物みな同じ。私もちゃんと生き物なのだ。(並)

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