春風雑話

 春は早くから誘いが多い。まだ寒い時期の「ヤマアカガエルが大合唱だよ」に始まり、野山で咲く花々に芽吹く新緑、ヒキガエルの目覚め、エトセトラエトセトラ。そういう誘いはなるべく乗るようにする▼なんて言うとフットワークが軽い人間のようだけど、幼い頃は家族が心配するくらい動かない子どもだったらしい。三つ子の魂百まで。生来、出不精な人間で、だからこそ意識してお出かけするのだ▼昔、大流行したドラマのせりふで好きな言葉がある。「出不精なんだけど、人からの誘いには結構乗るんだ。案外いいことあったりするし。帰り道にきれいな夕日が見えたりとか、それくらいなんだけど」。細かい言い回しは忘れたけれど、こんな内容。ミーハーだと言われようと、何となく大切にしている感覚だ▼朝日を浴びて染まる山、空を裂いた稲光、大きく真っ赤な夕日、凍える空気の満天の星。どれもこれも、部屋に閉じこもっていたら見られなかったもの。出合えてよかったもの▼脳みそが沸騰して疲れ切った夜、花の匂いと雨上がりのやわい風が抜けていく。見上げれば雲の隙間から月の白い顔がのぞいていた。あしたもまた、きれいな景色が見られたら。楽しい何かに出合えたら。(

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