土地の記憶

 黒保根で米づくりに取り組む長谷川達さんがこんなことを話していた。1枚の田の中で同じように育てているのに稲の成長に差が生じる場合がある。周囲の樹木で日差しが遮られたり、土の栄養分が均一でなかったり。土地の生い立ちの違いもまたその原因となりうるという▼一見、均質な水田のように見えても、ある部分は斜面を削り、またある部分は埋め立て、そうして平坦な広がりをつくり、1枚の田として利用している。削った部分は土が締まり、稲の根は張りにくい。埋め立ての方は締まりが緩く、根も張りやすい。水の浸透度も違う。これが成長の差となる▼同じように見える土地でも生い立ちには差異があり、何かの拍子にそれが顕在化する。そんなことを考えながら、カスリーン台風の2カ月後に空撮された桐生市の写真を眺めおやっと思った。自宅のそばに白く細長い氾濫の痕跡がある。70年前、桐生川からあふれた水がここを流れたということか▼桐生川から通じる細い水路の流域。昔はよく水遊びをしたが、今はコンクリートのふたで覆われ、流れは見えない。被災地や被災者の話と同様、自分がいま暮らす地域がどんな状況だったのか、話を聞いてみたいと思った。(

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