流れる石の音

 桐生新町の町立てにあたり、現在の本町通り西側に天満宮境内から新川まで、生活用水のための水路が掘られた。江戸時代中期の絵図にある水色の筋の遺構が、一・二丁目の歩道の下に良好に保存されていることがわかった。見慣れた街並みに深みが増した▼水道管埋設工事に伴い市教委文化財保護課が確認したもので、旧書上邸前は御影石のきれいな切石積み。さすが書上文左衛門、かの坂口安吾もこの水路をまたいでいたのだとじんときて、復活を夢にみた▼重要伝統的建造物群保存地区の先輩に、石見銀山ふもとの大森がある。転勤族の従弟の結婚式が広島であり、翌日一人で訪ねてみた。世界遺産登録以前で交通も不便極まりなかったが、ゆえに得難い出会いがあった▼この地の女主人が偶然の旅人の寂しさを案じて招き入れてくれたのだ。大きな古民家の台所からさらに古い庵へ。わらを漉き込んだ土壁にろうそくの影がゆれる。暗さになれて杯に手を出し小声で語り合ううち、届いてきた音がある▼そばを流れる水路の底に敷かれた小石が水に転がって奏でる、天然のオルゴールだった。今ここに、なぜいるのか。自分じしんが小さな石になって、ころころ流されていったようだった。(

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