初心顧みて

 文章を書くことが好きだった時期が筆者にもあった。中学生のころ。学校から帰ると毎日、机に向かって勉強とは関係のない文章を書いていた。字面のいいきれいな言葉を並べ、心地よい語感の文が書ければよかった。自己満足だったが、楽しかった▼最初は書き言葉がうまく使えず、何度も辞書を引いた。考えた通りにしたためたつもりでも、書いた文章を読み返すと、書きたかった内容とずれていたことも多かった。また、魅力的な語句を使いたくて言葉に振り回され、内容が曲がっていってしまうこともあった。それでも自分の内面と向き合いながら、何の制約もなく書く楽しさは格別だった▼職業で文章を書くようになると、好きで自由に書いていた当時とは違ってきた。社会人として筆者に求められるものは、取材対象者とよく話し、よく聴き、適切な言葉で読者に伝える力だ▼スポーツや学問、芸術など若くして夢中になる分野は人によってさまざまだろう。成人して社会で生かす機会を得ると、純粋だった頃とは異なる楽しみや味わいが加わってくる。若いときに好きで選んだものは、どんな道を歩むにせよ人生の軸となる。若いうちは恐れず疑わず一心に打ち込むのがいいと思う。(

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