わくわくの味

 二つばかり探し物をしていて、渡良瀬川に出かけた。少し風の強い日だったけれど草木が揺れる音は優しくて、雲間からこぼれる光に水面はきらめく。誘われるままに河川敷をふらふら進むと、端に高さ20センチほどの桑の若木。そこに幼く赤いどどめが実るのを見て、こみ上げる懐かしさに思わず笑った▼小学生の下校時、友達とさよならした後に通りかかる桑畑で、しょっちゅうどどめをいただいた。小さいころから寄り道が好きで、文字通り“道草”を食べていた。桑畑に鈴なりのどどめ、庭から枝がはみ出たユスラウメ、熟しすぎて道路に落ちる寸前の柿▼そりゃあ、当時だってスーパーや八百屋さんで買った果物のほうがおいしいのはわかっていた。でも「見つかったら怒られるかも」という罪悪感を背負いながらの発見は、何だかとてもわくわくした▼カミキリムシの集まる木、オナガに威嚇される道、猫が昼寝をする塀─生き物の営みを見つけるとわくわくは倍増。出合ったものは記憶に残り、大人になった今でも生活の端々で顔を出す。まあ、さすがに“道草”を食べることは減ったけれど▼結局、その日の目的は二つとも見つからず、探索は持ち越しに。でも、これもまた道草の味。(並)

関連記事: