書きかけの手紙

 書きかけの手紙を自宅で偶然目にした。宛名も差出人も15歳になる娘の名前。20歳になった未来の自分宛ての手紙らしい▼「元気ですか?」で始まるその手紙には、周りに甘えがちな自分へのいらだち、15歳で親元を離れて寮生活を送る決意、700キロ遠方での高校生活への期待と不安が、たどたどしい言葉で綴られる。「いま幸せですか?」。20歳の自分に問いかけるかたちで終わっていた▼娘が進路希望を初めて父に話したのは昨年春。島根県にある高校に入りたいと頭を下げてきた。幼いころから男子に交じって続けてきた球技に、看護学校に行くまでの3年間打ち込みたいという▼誘われるほどの実力もない文字通りの“志願兵”。喉まで出かかった反対の言葉をのみ込む。初めて見せた娘の強い意思表示がうれしくて、つい思いとどまらせるタイミングを逃してしまった▼あれから1年。旅立ちの4月。新たな一歩を踏み出す季節がやってきた。桐生市役所でけさ新採職員の辞令交付式を取材し、初々しい新人たちに心の中でエールを送る。彼らや彼女ら一人ひとりにもきっと、いろんなストーリーがあるのだろう。そんな清々しい思いで、新年度の始まりを迎えた。(針)

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