きみは友達

 「ゴロウ」という友達がいる。小柄な年若い柴犬で、くりくりの黒い瞳が愛らしい。相手がどう思っているか知らないけれど、目を細めてふにゃんとした表情を見せてくれるから「友達」と言っていいんじゃないだろうか▼彼は取材先の近所の庭にいる飼い犬。今でこそ打ち解けたけれど、初対面から何回かは近づくと警戒されて、吠えられもした。ゴロウがぴりりと緊張するから、こちらも一歩引くわけで、互いに距離を探り合った。ゆっくり少しずつ相手を知り、最近は会えば和やかにあいさつを交わす間柄▼先日、取材帰りにゴロウの元へ寄り道したとき、彼の主人は入院していて不在だった。「簡単な手術」とのことだけど、秋の日差しに暖められた庭で伏せるゴロウの表情は、なんとなく寂しげ。差し出した手に鼻をすり寄せてくる。「早く元気になるといいねえ」。言葉には出さないけれど、きっと同じ気持ち。なでられるままの首筋はふわふわやわらかく、あたたかい▼彼の名前はゴロウ。もしかしたら「ゴロー」、もしくは「ゴロ」かもしれない。その辺りは正確に知らないけれど、関係はないだろう。錯覚とか思い込みかもしれないけど気持ちが通じたと信じるから、やっぱり彼は友達なのだ。(並)

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