人間の問題研究

 85歳の彫刻家掛井五郎さんと、さらに8歳上の型染めの第一人者柚木沙弥郎さんが手を取り合って、きょうの出会いを喜んだ。ふたりの現役アーティストは年齢も味方につけてダンディで、真摯な厳しさの底に広がる大らかなユーモアは無垢な魂に触れるようだ▼「ぼくたち盲人にもロダンをみる権利がある」という長男の言葉にこたえて、児童劇作家の村山亜土・治江夫妻が渋谷松濤に創設したギャラリーTOM。掛井さんの代表作「人間の問題」シリーズを展示中だ。そっと手を当ててみる。ブロンズの冷たい肌の奥の奥に届くかどうか▼芸術とは何か、人間とは何か。掛井さんの問いは続いている。新作は和紙をつないだ縦8㍍ものドローイングで、展示空間を超える。初日の一刻、床に広げられると、ピカソが、花畑が、黒く大きな女性が、母のチョウが、そして人、人、人がコラージュで。生命は連綿と産み落とされて、なお高みを求めなければならない▼限定版の作品集「さまざまな顔」も刊行された。写真家藤本巧さんがアトリエや各地に置かれた作品を撮影、作家本人の顔も一瞬を不動に収めて魅力的だ。サインを願うと掛井さんは「これほどの大事なことです」と添えてくれた。(流)

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