バックヤード

 「『関係者以外立ち入り禁止』っていう扉にあこがれがあって、そこに入れるような仕事をしたい」。学生時代の後輩の言葉だ。具体的な職業が思い浮かばないから、あいまいな返事をした気がする。彼女は今、どんな職業に就いているだろう▼思えば、この仕事は「関係者以外立ち入り禁止」にお邪魔することが多い。ステージの袖、ホールの照明横、自然・文化施設のバックヤード、などなど。そこは普段とはちょっとだけ違う角度から景色を見渡せて、新しい発見ができる。わくわくするひとときだ▼それは人も同じ。積み上げてきた経験、蓄積してきた知識、大切にしてきた感情。みんな普段はバックヤードにしまって表には出さないものを持っていて、取材で共有した時間のほんの一瞬、背景に広がるスペースを見せてくれることがあり、その奥深さにわくわくする▼先日、ある施設の職員が言った。「バックヤードは、表でお客さんに見せる展示スペースよりも広いことが大切」▼この身にもあるはずのバックヤードはどんな具合だろう。ものすごく広くて、すっかすかであればいいなあ。だってこれから色んなものを収集して、蓄積してゆける。それはとても楽しいことだと思うのだ。(並)

関連記事: