今月の記事: 2017年3月

いつもの笑顔

 笑みを絶やさないその人は、電話の声も穏やかさを含んでいる。仕事上の付き合いで、公の場でしか会わないから、本当のところは知らないけれど、「平らな道を歩いてきた人」という印象だった▼変わったのは、その人が自殺予防講座の講師を務めたとき。社会福祉士として登壇し、一般的な講演と同じくモデルケースをもとに解説する。ただ違ったのは、本人の体験を事例として紹介したことだった。自殺を図った父親について、取り巻く家族について、経験を語る▼生々しく、激しい内容なのに口調は淡々と、ときにユーモアを交えていた。専門職としての務めだから当然なんだろうけれど、自らの体験と感情をさらけ出す強さ、そのうえ過去の自分に同情しない客観的な姿勢に、尊敬しかなかった。穏やかさのなかに、計り知れない経験をのみ込んだ強さが入り交じっているのだと知った▼いつも笑顔の人だって、常に表情そのままの状態にいるわけがなくて、逆もまたしかり。せわしない毎日では、こんな当たり前のことも忘れてないがしろにしがちだけど、大切にしていたい▼講演の後、「何をのみ込んでも消化して、できれば笑顔を絶やさずに」。自分を省みて、そう思ったのだ。(

「寅久保バイパス」着工へ、県道小平塩原線

 みどり市大間々町塩原―小平間を結ぶ県道小平塩原線「寅久保バイパス」の工事が近く本格化する。渡良瀬川とその支流の小平川に沿って通る現道の北側斜面を開削して新たな道を整備する計画。1995年度の事業開始から22年、用地交渉の難航から十数年間の中断をへて、「地元の悲願」と言われた同バイパスが実現へ向けて動きだす。

保育園に鷹が飛ぶ、園児ら歓声「すごい」「おっきい」

 空のハンター猛禽類を連れて鷹匠の彦部和夫さん(上州猛禽会)が2月28日、東保育園(桐生市東五丁目、名淵敏江園長)でバードショーを行った。園児たちは間近に飛ぶフクロウやコンドルに歓声を上げ、「すごい」「おっきい」「羽が当たった」などと大喜びしていた。

遺志

 あのとき彼は逃げなかった。地元で小さなガス店を営み、ライフラインを預かる立場。だれかがやらねば進まない。ひとけのなくなったまちで、そんな仕事に奔走する日々。東日本大震災の原発事故直後。もう6年も前のことになる▼一枚の写真がある。主のいなくなったビニールハウスで、彼が飄々と花の苗に水をまいている。幼いころから慣れ親しんだ思い出の花農園。避難した一家が戻るまで手入れを続けた。のちに再開した花農園の主は、「アイツがいたから」と涙した▼いわき市の出身・在住。最愛の妻と2人暮らし。世話焼きで人懐こい性格。どこへ行っても、だれと会っても、方言丸出しで、だれからも好かれた。そんな彼が2月26日付の地元紙に載った。「バイク転倒、男性死亡」。言葉が出なかった▼3年前、ある集まりで一緒に幹事をした。参加者に配ったメッセージ集に、彼は妻と綴った一文を投稿した▼「『こころのなか』にある面倒なことに、手を伸ばそう。それは、とても厄介なものだ。手を付けると、もう引き返せない。悩んで、迷って、もがいて、涙目になりながら、立ち向かっていこう。大丈夫、ここにいるみんなは、その姿を笑ったりしないよ」。合掌。(