火の行方を見届ける

 あすから3月、春の全国火災予防運動が始まる。22日付の本紙でも紹介されたが、桐生市消防本部の2016年消防白書によれば、火災の月別発生件数は3月が最多。年間65件のうちのほぼ半数が、3月から5月までの3カ月間に集中している。

 このことは桐生・みどり地域の特徴というわけではなく、全国的な傾向のようで、消防庁の白書をのぞいてみても、3月は建物火災が最多、林野火災も5月に次いで多いというデータがある。火災予防運動で注意を呼び掛ける理由もそこにある。

 火災を予防するにはいくつかのポイントがある。基本は、自分で使った火をしっかりと始末すること。自分が扱っている火の行方を消えるまで見届ける。その実践にあるはずだ。

 出火原因の上位を占める「たばこ」も「たき火」も、火の不始末に由来するのだが、これくらいなら放置しても大丈夫という体験の積み重ねが、やがて経験則となり、条件がそろったとき、ふいに火災へとつながる。

 つい先日も、信号待ちの車の窓から煙りの上がるたばこを投げ捨てている運転者を目撃したが、そのたばこが道端にまで転がり、枯れ葉や紙くずに引火する可能性は、十分にありうる。

 「放火およびその疑い」も火災原因の上位を占めるが、意志を持つ人の行為までを防ぎ切ることはできないからと、あきらめるわけにもいかない。家の周囲に燃えやすいものを置かないこと、死角が生まれないように物を片づけておくという習慣もまた、火災への備えになる。

 もう一つ、小さな火種のうちに気づき、消し止めるという視点も、火災予防の基本である。

 2006年に設置が義務化された住宅用火災警報器については、いざというとき正しく作動するかどうか、確認しておくことが大切。電池式の場合、寿命の目安となる10年を迎える機器がこれから増えてくるはずで、安全を担保するためにも、そろそろ点検しておいた方がいい。

 熱源として、また、光源として、暮らしの中で火を扱う機会は徐々に失われつつあるのが実情だ。ただ、人がエネルギーを利用する限り、火事という災いから逃れることはできない。

 火へのおそれを抱きながらも上手につきあい、制御することで、人は便利な暮らしを手に入れた。便利さと隣り合わせのおそれを改めて認識する。火災予防運動の役割でもあるはずだ。

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