避難する文化をつくる

 九州北部で発生した豪雨災害による被害が日ごとに拡大している。これまでに25人もの住民が命を落とし、20人以上の行方が分からないという。捜索活動は現在進行形である。被災者に心よりお見舞い申し上げたい。

 この地域は2012(平成24)年7月にも豪雨災害に見舞われ、30人もの命が奪われている。報道によれば、5年前の経験を踏まえ、川の流れの異変を敏感に察知し、住民どうしで声を掛け合い、自治体の指示よりも早く自主避難に動いた人たちも少なくなかったという。

 熊本では昨年、地震災害も発生しており、生命を守るための防災意識は相当高いはずだ。それでもこれほどの人が逃げ切れず、土砂や濁流にのみ込まれてしまったわけで、教訓を生かしきれぬほどの雨だったことが被害状況からもしのばれる。

 温暖化の影響も受け、雨の降り方は近年ますます極端になりつつある。こうした実情を説明するための新たな用語も徐々に増えている。15年9月の関東・東北豪雨で一躍脚光を浴びた「線状降水帯」や、気象庁の発表する「特別警報」など、普段とは違った脅威を言い表す言葉を、今回も繰り返し耳にした。

 ただ、言葉に反応するよりも大切なのは、自分が暮らす地域の特徴を知ることだ。今から70年前、カスリーン台風が関東・東北地方を襲った。桐生市や足尾町では9月13日から15日にかけ、400ミリ近い豪雨となり、発生した洪水により桐生市では死者113人、行方不明33人という未曽有の被害に見舞われた。

 このときと今とでは、環境もだいぶ異なる。渡良瀬、桐生の両河川とも堤防は厚くなり、上流にはダムが完成した。支流の随所に砂防ダムがつくられた。山間地では植林も進み、流域の保水力もアップしたはずだ。

 一方で懸念もある。ダムにより流量管理がしやすくなった分、河川の土砂堆積が進み、緑化が促された。周囲の傾斜地には太陽光発電のパネルが並ぶ。時間100ミリを超えるような雨でどんな事態が生じるのか、そこはまだ未知の世界である。

 地域全体の高齢化が進み、避難に時間がかかることも想定される。身の危険を感じたら、まずは近所の避難場所に足を運ぶ。東日本大震災の際、防災の専門家から聞いた「避難するのは当たり前」の習慣を身につけることが、これからの地域防災の大きな課題になりそうだ。

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