備えを見直す

 「○月○日午前5時ちょうどに発生した強い地震は、太田市で震度7、桐生市とみどり市で震度6強を観測した。震源は太田市でマグニチュード7・1。同市から桐生市の渡良瀬川右岸にかけて延びる太田断層が活動したものとみられる…」

 東日本大震災発生の翌年、2012年9月1日発行の本紙「防災の日特集」に掲載された、架空の被災記事の書き出しである。同年6月、群馬大学の教員ら学識経験者でつくる群馬県地震被害想定調査検討委員会が、最新のデータをもとに「考えられる最大の被害想定」を報告書にまとめて公表している。記事はその内容に沿って組み立てたもので、桐生市で最大70人、みどり市で21人が死亡、負傷者は両市で1161人、住宅の全壊は1502棟、避難者は約1万人に上ると結んでいる。

 太田断層とは、群馬大学教育学部の熊原康博准教授らによって2009年に確認された活断層で、八王子丘陵の東の縁に沿って広沢町から太田市東方を通り、邑楽町方面に延びている。桐生・みどり地域ではもう一つ、新里町から大間々町を抜けて川内町方面へと延びる大久保断層が確認されており、この地域を震源とする大地震がいつ発生してもおかしくないと、これは二つの活断層の存在自体が雄弁に物語っている。

 16日、茨城県南部を震源とする地震があり、桐生・みどり地区では最大震度5弱の揺れを観測した。短い初期微動に続く突然の強い揺れに、多くの市民が身構えたはずだ。屋根や壁が壊れ、照明が落ちるなどの被害も生じた。みどり市内の学校では、東日本大震災後に策定した引き渡し対応マニュアルを初適用。鉄道各社は走行中の列車を止め、長時間かけて線路を点検した。地震後、比較的落ち着いて対応できたのは、あの震災ほどの規模ではないと、とっさに感知したからかもしれない。

 ただ、太田断層や大久保断層が活動するとなれば、さらに直下型の地震となる。地震の規模(マグニチュード)が16日と同じ5・6だとしても、揺れ方は大きく変わるはずだ。今回は白昼の発生だったが、これが深夜だったら、明け方だったらどうなのか。阪神淡路大震災のときのように、家具や家電の転倒・落下に伴う被害は防げるのか。避難用具の準備、家族間の情報共有はどうか。地震発生のたびに見つめ直したい備えだ。

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