専門店のたのしみ

 自宅を中心に半径500メートルの円を描き、その円の中にどんな商店があるのかチェックし、自分の足で訪ね、調べてみる。そんな取り組みを、未来創生塾の親子が実践した。先日、シルクホールで子どもたちが取り組みのまとめを発表したのだが、これがなかなかおもしろかった。

 例えば、桐生市天神町の群馬大学周辺を調べた親子は、あるすし屋に入り、主人に取材をする。「味に違いがでるのは、ねたよりもしゃり。米は寿司に合う銘柄を独自ブレンドしてもらうし、寿司酢は赤酢と白酢を合わせて使っている」と、おいしさの秘密を聞き出す。それから寿司をいただけば、一段とおいしい寿司になる。小さなリサイクルショップでは、程度のいい委託販売の衣料品が多数あり、思わず購入してしまったと、笑いを誘いつつ、報告が続いた。

 生花店では海外から取り寄せた花が多いこと、和菓子店では7種類の砂糖を使い分けていること。それぞれの店の特徴を探しながら、その店で扱っている商品を信用している常連客が店を支えているのだと、親子は気づく。知らない店の扉を開けるとき、最初はどきどきするけれど、いったん入れば、そこに新しい世界が開ける。20年、30年と店が続いているのには、しっかりとした理由があるわけだ。

 子どもたちに触発されて、こちらも改めて自宅から半径500メートルの店を調べてみた。大型スーパーが2店。ほかにも鮮魚店、精肉店、米穀店、飲食店、美容院、理髪店などがあるものの、かつて足しげく通った八百屋、酒屋、豆腐屋、金物屋、和菓子店、書店、そういった専門店は、ことごとく姿を消してしまった。コンビニエンスストアさえ、すでに消滅している。

 そこそこの商品をできるだけ安価で手に入れたい、こうした価値観を変えることは難しい。ただ、専門店にはその道のプロフェッショナルがいること、そういった目利きの力が、商品の安全性や確かさを担保しているのだということを、私たちはもっと評価すべきなのだ。

 肉をねかせて熟成させ、うまみを引き出したり、魚の切り身の厚さや塩加減をいいあんばいにととのえたり、客の要望に合わせたワインや米を厳選したりと、そんな職人たちの手間や技術が、私たちの日々の暮らしを少しだけ豊かにしてくれる。改めて子どもたちから教えてもらった、専門店の効能である。

関連記事: