足元の震度7

 14日午後9時26分、熊本県内を震源とする地震が発生し、熊本市や宇城市、益城町などを中心に甚大な被害が出ている。被災した人々にはまず、心よりお見舞い申し上げたい。

 地震の規模(マグニチュード)は6・5。最大震度は7。規模に比べて震度が大きいのは、震源が約11キロと浅く、震央が住居地に近いことなどに由来するのだろう。暮らしの足元が、突然揺れたといった印象だ。

 東日本大震災から5年。私たちの心身の記憶にあのときの揺れはまだ生々しい。熊本の人たちも地震への備えはおろそかではなかったはず。それでもいざ発生すれば予測もしない事態へと巻き込まれてゆくのが災害の本質で、震度7という強烈な本震と続発する余震の中で一夜を明かした住民の不安はいかばかりだったかと、心中を察する。

 倒壊した家屋やインフラなども多く、被害の全容把握には時間がかかりそうだ。隣の鹿児島県薩摩川内市には、国内で唯一稼働中の川内原発が存在しており、避難計画の不備が改めて懸念される。国や行政は住民の生命保護を最優先に、復旧復興に全力を挙げてもらいたい。

 5年前、震度6弱の地震に襲われた桐生市だが、あのときの揺れと今回のような直下型地震の揺れとでは、震度が同じでもおそらく違った揺れ方になる。仮に桐生みどり地域の直下で地震発生となれば、5年前とは被害も変わってくるはずだ。

 2012年、群馬県は地震被害想定調査の結果を公表している。桐生市から太田市にかけて延びている太田断層が活動し、太田市を震源にマグニチュード7・1の地震が発生した場合、桐生市とみどり市では震度6強を観測し、死者90人、避難者9500人、家屋の全壊は約1500棟に上るという想定だ。震源が桐生側にずれれば、被害の状況も大きく変わる。

 群馬大学の片田敏孝教授が指摘するように、どんなに大きな地震でも、人の暮らしがなければ災害ではなく、記録として後世に伝わらない。逆に小さな地震でも人口密集地で発生すれば大災害となる恐れはある。その意味で、災害とは人の暮らしの記憶であり、それは自然の尺度からすれば、短くかつ狭い。

 経験を頼りにするかぎり、地震の予測は難しい。だからこそ私たちは地域を知り、できる限りの備えで対応するしかないのだと改めて肝に銘じたい。

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