桐生織塾休塾へ、相続放棄で土地・建物公売に

 里山に抱かれた古民家で機音を響かせ、貴重なコレクションを公開して織物やアートにかかわる人たちが交流し、子どもたちの体験学習の場ともなっていた桐生織塾(桐生市梅田町一丁目、新井求美塾長)が、6月の企画展を区切りとして休塾する。現在の土地・建物は桐生市が借り上げて創作工房として提供してきたが、所有者の死去に伴い国税局の公売手続きに入る見込みだからだ。「桐生の近代織物工業発祥の成愛社ゆかりの、かけがえのない地」と新井塾長。活動とコレクションの保管場所を探さなければならず、改めて開塾からの時間を振り返っている。

 桐生織塾は県繊維工業試験場に勤めながら染織コレクターとして広く深い人脈を培ってきた武藤和夫さんが、ものづくりの心と技を伝えようと1990年3月に設立。桐生市工房推進協議会の創作工房第1号となり、96年に発足した銘仙研究会の拠点でもあった。

 2009年に新井さんが新塾長に。工房活動に加え年2回の企画展を開催、海外からのスローファイバーツアーなど随時見学者を受け入れ、未来創生塾や梅田南小学校の子どもたちの体験学習の場となり、ロケも多数。「ぐんま絹遺産」でもある。

 「観光繻子(しゅす)の技術を市内に広め、ロシア正教を勤労規範とする進取の思想と、田畑に水を引いて水車を回し茶畑や梅林があって炭を焼く、循環型の暮らし。景観と建物を守ってきたつもりです」と新井塾長。家賃や光熱費など補助を受けているが、活動はすべて塾生らの手弁当で、修繕も行ってきた。

 しかし昨年2月に所有者が死去。土地約1468平方㍍と建物の契約更改ができず、遺族が相続を放棄したため桐生市産業経済部産業政策課では供託金を法務局に預けて見守ってきた。しかし1年が経過しても国税局で相続財産管理人の手続き中で、公売になるとしても区割りや価格、時期など未定だという。

 同課では産業界や行政、各種団体代表の8委員で構成する工房推進協議会(石原雄二会長)を22日に臨時開催し、今後の創作工房の支援の在り方を論議することにしている。

 一方で、織塾としては「織機は10台あり織りたい人がいる限り、活動を続ける。銘仙や世界各国の民族衣装、機道具類など数千点のコレクションを守る責任もある」と新井塾長。現在地の由緒とたたずまいへの愛着を持ちつつ、活路を探すことになりそうだ。

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