中途失聴・難聴の70歳、大学院を修了

 70歳目前で大学院に進学し、研究生活に挑戦した荒川とみ子さん(70)=桐生市東五丁目=が今春、修士論文をまとめ上げ、修了証書を手にした。中途失聴・難聴という障害を持つ荒川さんは自らの経験をもとに、聴覚障害者の現状、社会生活の場で抱える課題の解決を図り研究。思い新たに「障害への理解を深めてもらえるよう呼び掛けたい。障害を持つ人が孤独にならず暮らせる社会になってほしい」と語った。

 群馬医療福祉大学(前橋市)大学院社会福祉研究科を修了。学位論文「中途失聴・難聴者のメンタルヘルスの一考察―中途失聴・難聴者の抱えている問題と課題―」は、中途失聴・難聴者の現状と課題を明らかにし、職場や社会生活の場でのストレス軽減・解決を目指した。

 見た目にわかりにくい聴覚障害は「軽く見られがち」という荒川さん。特に人生の途中で聞こえにくくなった中途失聴・難聴者は発語できる人も多く、健聴と同じ対応を求められるなど、特有の苦労もある。「自分だけが聞こえない、できない」という悩みから孤独を抱える人も多いという。

 荒川さんが難聴になったのは30代ごろ。人生の途中で聞こえにくくなった失望感は大きかった。「できない」「だめだ」と嘆く荒川さんを救ったのは聴覚障害を持つ友人の言葉だ。「聞こえる人の気持ち、聞こえない人の気持ち、両方がわかるからこそできることがある。『聞こえなくてもできる』ことの証しをしてほしい」。この言葉が新たな一歩を踏み出すきっかけとなり、高齢での大学院への進学を後押しした。

 研究では、人と人のかかわりで成り立つ社会において、豊かで健やかな生活には何気ない会話など時間を共有することが欠かせず、聴覚障害者も同様だと展開。障害の有無にかかわらず、「笑い合い、学び合えるよう理解が広がるように」できる支援が大切だとした。適切な支援によって障害を持つ人の学び、成長する機会が広がれば、“してもらう”だけでなく「できることを社会に還元することもできる」という。

 また高齢化率の上昇とともに、中途失聴・難聴者も増加傾向にあり、音声でのコミュニケーションができず、手話もできない人は社会から孤立してしまうおそれがある。論文では周囲が気軽に書いて伝え、情報共有することで人と人の円滑なコミュニケーションが可能になり、障害者の心の健康につながると締めくくった。

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