今泉幸子さん、病と向き合い初歌集

 風人同人で、群馬県歌人クラブ会員の今泉幸子さん(74)=桐生市相生町在住=が初めての歌集「あぶらかだぶら」を行路文芸社から出版した。病と向き合い、生み出された短歌を中心に、周囲への愛あふれる歌が収録されている。

 今泉さんは1942年、桐生市生まれ。風人短歌社にはボランティア仲間に誘われ、2001年に入会した。「姉が俳句をしており、自分もいつか人生の最後まで楽しめる俳句か短歌をやりたいと思っていた」

 入会から4年がたった時、脳腫瘍が見つかり、10時間あまりの手術と80日間の入院を経験。「再びの命をいただきました」。回復も順調に10年を過ぎたころ、今度は夫の一久夫さんが体の自由が少しずつ奪われる難病であることが判明した。

 その夫の後押しで歌集の出版を決意。「まだ早いと思うが、夫の『自分が元気なうちに』という思いも理解できた」と話す。風人短歌社代表の須田利一郎さんの協力を得て1000首弱の中から約480首を選び、81個の小題を立て収録した。

 タイトルの「あぶらかだぶら」は40年以上前、子供向けテレビ番組で黒柳徹子さんが唱えていたのを見て以来、困難な時、唱えてきた呪文。表紙はデザイナーをしている長女の今泉千尋さん、題字は次女の林美絵さんとその子たちが担当した。

 「短歌を詠むことで救われた」という闘病生活だったが「泣き言の歌は作らないと心に決めていた」と語る幸子さん。「麻酔まだ覚めきれぬ夜譫言のやうに唱へるあぶらかだぶら」「手術した脳から『NO』の信号が時々出ます四年を経ても」など病の歌にもどこか明るさが。

 また、「夫の弾く二胡の音ときに躓けば吾が庖丁も共に乱るる」「人は誰も心に闇を持ちゐしと師は徒然草のあはひ挿みき」「そのままのお前で良しと言ふ声が老いし桜の洞より聞こゆ」など、日常を詠む歌からは鋭くも、優しいまなざしが感じられる。

 歌集はA5判200ページで、2500円。

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