「コーヒーは自分と社会をつなぐ扉」、15歳焙煎士、発進のとき

 桐生市小曽根町の岩野響さん(15)が自家焙煎(ばいせん)したコーヒー豆を販売する「HORIZON LABOホライズンラボ)」。インターネット情報サイトで紹介されて人気に火がつき、5月の大型連休には全国からコーヒー豆を求める人が殺到した。来店した人々とのかかわりを通し、これまで目指してきた「思いを託すための“最高の焙煎”」と同時に「お客さんの飲みやすさも追求したいと思うようになった」と興味を深め、6月の営業(1~7日)に向けて準備を進める。

 「ホライズンラボ」は岩野さんの両親(開人さん、久美子さん)が営む洋服制作・販売「リップル洋品店」の一角にオープン。発達障害の一つアスペルガー症候群と向き合う岩野さんが「自分にしかできない役割」を模索するための“研究所”だ。

 岩野さんが焙煎を始めたのは中学1年生。学校生活になじめず、「どう生きていこうか、何をしようかわからなくなっていた」時期に、知人から雑貨の小さな手回し焙煎器をもらった。

 火加減も時間も手探りだったが、のめりこむように毎日欠かさず朝に晩に焙煎して2年以上。やがて生まれ持った味覚と嗅覚を味方に腕を磨き、「自分の表現」をコーヒーに託すように。高校進学はせず、両親の協力で今年4月、オリジナルブレンドのコーヒー豆「ホライズンコーヒー」の販売を開始した。

 「コーヒーは自分と社会をつなぐ扉」と話す岩野さん。熟練の焙煎士と意見を交わしたり、豆を購入した人から「ミルを買ったよ」「コーヒーのことを知りたくなった」などの反響をもらったりするうちに、「世界の広がりを感じている」。

 岩野さんが焙煎で一番大切にするのは、じっくり観察する「豆との対話」。自分が暮らす桐生の町の季節に合わせた味や香りをイメージし、手回し焙煎器と大型焙煎機を使い分けて、一般的な時間の倍以上をかけて焙煎する。

 新緑と生き物がにぎわう5月は、さわやかで香り豊かなブレンドを、6月は「静かに町や緑をぬらす梅雨のイメージで、深めの焙煎を考えています」と話し、完成に向けて微調整を続ける。

 開店は月に7日間で、3日ほど前から販売用の焙煎を始める。その他の期間はコーヒーの研究はもちろん、「リップル」で生地染色の一端も担う。「興味は広くて真鍮(しんちゅう)工芸も挑戦しているところ」。幅広い経験が岩野さんの焙煎するコーヒーに深みを与え、15歳の世界をさらに広げてゆく。

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