「藝術大使」桐生を語る、人気画家の山口晃さん

 桐生市の芸術文化振興やまちづくり、魅力発信に力を借りようと、現代の人気画家、山口晃さん(48)が「桐生市藝術大使」第一号に任命された。任命式と記念講演会が2日、桐生市市民文化会館シルクホールで開催され、約800人が就任を見守り、「ふるさとに思う」と題した講演を楽しんだ。

 任命証を亀山豊文市長、花束をキノピーから受け取った山口さん。幼時からの桐生の思い出を「アイスまんじゅう」や人がうなりを上げていたような歩行者天国、桐生高校のクラスメートなどで鮮やかに描き出した。

 芸術家という存在については「骨折を治すことはできないけれど、入院中に画集を見て楽しんでいただくことはできる」と例える。「役に立たないのではなく、何の役に立つかわからない」と。

 「描きたいものを描きたいだけ描いていると、自分が透明になって、画面の声が聞こえてくる。絵が求めてくる」という境地を語りつつ、客席から子どもの声が聞こえると即、ホワイトボードにアンパンマンを描いて見せるのも山口さんだ。

 桐生の俯瞰(ふかん)図を江戸時代から空想の未来まで複層的に描いた大作「ショッピングモール」も紹介した。天満宮からの街並みが江戸から昭和へ、そしておしゃれな外壁で囲まれた商店街が出現する。「郊外に大型店舗ができて、街なかは空き地が増え、シャッターがおりて、鉄には赤さびが浮いている。東京の空は狭くなっていくが、桐生の空は帰ってくるたび広くなる。なら、商店街を囲って、空き地には曳家(ひきや)をする」。そんな発想という。

 「道後アート2016」で展開した作品も映像で披露した。温泉街の裏手や小路、空き地、看板など、ふつうは表舞台に出ないものを絵にし、邪魔者扱いされる電柱にも独特の美を見いだす。「生活の必要からできたものを美観で追い払うと、すっきりではなくのっぺりしてしまう」と。ひとつひとつを見極める審美眼の大切さを、ユーモアに包んで語っていた。

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