非白金触媒による燃料電池、世界初の実用化

 群馬大学理工学部の尾崎純一教授(56)=元素科学国際教育センター長、炭素材料学会会長=が日清紡ホールディングスと共同研究を進めてきた「カーボンアロイ触媒」が、バラード社(カナダ)の燃料電池スタックに採用され、12月から販売されることになった。非白金触媒を用いる固体高分子形燃料電池の実用化は世界初の快挙。尾崎教授は「20代からカーボン一筋に研究してきて、原理の発見から工業化まで見られるのはラッキーです」と笑顔で語る。

 二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギー源として水素燃料電池が注目され、ポータブル用電源、家庭用や自動車用としての応用が期待されている。しかし化学反応を促進する電極触媒に使われている白金は高価で有限な資源。燃料電池の普及には白金に代わる触媒の開発が不可欠となる。

 尾崎教授は1994年に電極触媒活性を持つカーボン材料を発見。「金属触媒の研究は昔から行われてきたが、カーボンの触媒機能は初めてで、ケイ素など他の元素にも道を開いた」という画期的な発見だった。

 さらに活性点の化学構造を明らかにし、反応を調べる研究を重ね、ナノシェル含有カーボンを開発。2006年からは日清紡と共同で研究開発を進め、炭素化工程の最適化と触媒表面の構造を制御することで、高い酸素還元活性を有するカーボンアロイ触媒の開発に成功した。

 日清紡はこれを工業化し、13年からバラード社と実用化に向けてセパレーターや電極の設計などの共同開発を進めてきた。今回、ポータブル型燃料電池において白金触媒と同等の発電性能と高い耐久性が得られたことで、採用が決まったという。カーボンアロイ触媒は空気極に用い、水素極は従来の白金触媒を使用するため、白金の使用量は約80%削減可能とする。

 日清紡グループでは「カーボンアロイ触媒は燃料電池の普及を加速させ、その市場をさらに拡大させる可能性を秘めた技術。用途開発を進め、水素社会の実現に貢献したい」としている。

 またカーボン研究64年の実績を継承発展する尾崎研究室では今回の「水素を使う」技術に加え、「水素をつくる」「水素をためる」ためのカーボン材料の開発も進めていく。

関連記事: