八木節、自前のバチで 鉦の音、より高く

 自前の道具で八木節を盛り上げようと、桐生市堤町三丁目に住む茂木治さん(70)は鉦(かね)をたたくバチづくりに挑戦している。使い古した剣道の竹刀に、北海道から取り寄せたエゾシカの角を組み合わせ、手にしっくりとなじむ道具を生み出す作業。繰り出される高らかな音色は、お囃子(はやし)に華やかさと熱気を吹き込む。

 茂木さんは2014年、八木節チーム「桐生日昇会」に入会。先輩奏者から指導を受けながら、鼓や鉦の演奏に精進している。

 鉦のバチづくりを始めたのは15年のこと。いい音や使いやすさを求めたゼロからのスタートは「試行錯誤の連続だった」という。

 握りの部分は、知人から譲り受けた古い竹刀を解体し、これを電動ヤスリにかけて形を整えた。「完全に乾燥し変形がなく、しなりもいいんです」

 持ちやすいよう手元は太めに残し、しなりが出るよう先は細めに削る。

 鉦をたたく「頭」の部分にはエゾシカの角を使う。「北海道の斜里町で、生え変わりの際に落ちるエゾシカの角を工芸品として利用していると聞いて、さっそく現地の工芸館に連絡したんです」

 八木節を知らない現地の人にCDを送り、お囃子の鉦をたたくために使いたいと説明。やりとり重ねて了解を取り付け、長さ3、4センチ、太さ1・5センチほどの大きさに加工した角を送ってもらうことになった。

 「こちらでとれるニホンジカの角よりも、すの入りが少なく、密度が高い感じ。高い音が出ます」と茂木さん。

 これまで50本ほど手掛け、桐生八木節まつりの演奏などでも活用している。

 知人からの依頼も多く、「製作に手間はかかるけれど『たたきやすいね』『自分が求めた音だ』なんて言われるとうれしくて」と、笑顔をみせる。

 バチの反対側に孫の手をつけたものなど、遊び心もたっぷり。究極の道具を求め、製作は続く。

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