“復興五輪”思い託す 一時帰郷中の桐生避難者ら

 東日本大震災からの復興を掲げて開催が決まった2020年の東京夏季五輪。そのニュースを特別な思いで見つめる人がいる。もうすぐ震災から2年半。東京招致が決まった8日、原発事故の影響で桐生市近隣に避難する人たちは、旧友と再会するために福島県いわき市にいた。原発の放射能汚染水漏れに揺れる小名浜港。桐生市に避難する同港の漁業関係者は「複雑な思いはあるが、対策に本腰が入るのではとの期待もある」と語る。

 「まずおめでとう」「早起きしてよがったな」。8日朝6時半前、桐生駅南口の観光バスに乗り込んだ人たちが、招致決定のニュースに笑顔で握手を交わす。

 福島県に帰郷した桐生市近隣の元避難者に再会しようと、きりゅう市民活動推進ネットワーク(近藤圭子代表)が初企画したバス旅行。桐生市近隣の避難者と支援者ら25人が、同県いわき市小名浜港に向かった。

 現地で迎えてくれたのは桐生市近隣の元避難者ら10人。桐生で以前ともに避難生活を送りながら、今は桐生に残る人と帰郷した人に分かれてしまった人たちが、昼食を取りながら旧交を温めた。

 バスの中で手に取った東京五輪開催決定の地元紙号外を、複雑そうな表情で見つめていたのは、桐生市から参加した避難者の滝原功さん(71)。

 滝原さんは、いわき市小名浜で営んでいた漁労機器製造業の工場と自宅が津波で被災し、親戚の縁で桐生市相生町の市営住宅に避難した。

 現在は可能な範囲で仕事を再開し、桐生と小名浜を往復する日々を送るが、ここ最近頭から離れないのが、東京電力福島第1原発の放射能汚染水漏れの問題だ。

 「原発から小名浜港までわずか40㌔。この2年半の間、漁業関係者は原発に振り回されっぱなし。この9月に始めるはずだった底引き網漁の試験操業も、今回の汚染水漏れ問題で延期になった」と肩を落とす。

 そんな中での東京五輪開催決定。「正直言って複雑な思いはある。でも、ここまできたら“復興五輪”の掛け声を信じるしかない。国が(汚染水漏れ)対策に本腰を入れてくれると期待したい」と、自らに言い聞かせるように語った。

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