山口晃さんがトークショー 「画業ほぼ総覧」展開催中の館林美で

 3歳のころのお絵描きから現在まで、山口晃さん(44)の「画業ほぼ総覧」展を開催中の県立館林美術館で10日、作家本人のトークショーとサイン会が開かれた。トークショーは申し込み開始日早々に満員御礼となっており、サイン会では画集や著書などを手にしたファン約150人が列をなす人気ぶり。館林美術館はじまって以来の、尋常ならざる事態となった。

 1969年東京生まれで3歳から桐生高校を卒業するまで桐生で過ごし、東京芸術大学で油絵を学んだ画家・山口さん。ホワイトボードに絵や字を描いたり消したりしながらのトークショーでは満場の聴衆に相対して、パフォーマーぶりも発揮した。

 故郷での今展ならではのコーナー「山口晃と桐生」に出品されている子どものころのお絵描きは、実家の秘蔵品。「広告の裏に、寝っ転がって描いてました」と図示する。「日付と年齢、父による考察が添えられていて、ありがたいことです」「平等院に襖(ふすま)絵を奉納いたしましたが、広告の裏紙というわけにはいかず、高級な和紙。しかし最初に汚すと、のびのび筆が運べるものです」

 学生時代の作品については「まじめに描いていたが、筆が定まっていない」と論評。西洋から入ってきた油絵に日本を入れようとしても、自身の中には桂離宮も有職(ゆうそく)故実もない。戻った先が落書き。「『だってこうしたいんだもん』という子どものような欲望を、大きなものとつなげるのが美術」と合点する。平行輸入の繰り返しはむなしいから、日本の古い絵に当たった。実際に描いてみることで当時の絵師の心持ちをつかもうとし、金雲の意味をとらえた。

 未完成のような作品も「動かない絵ではなく、描き始めから立ち上がってまた塗り残しがあって、円環のように経巡らないかと。見ている人が絵を育ててくれるんです」「趣味でも職人でもなく、芸術は一回性だから永遠の素人であり、玄人であるのが芸術家」と述べる。しかし「言ったこととやったことはイコールではない」と自己批評もして作品に対することをすすめていた。

絵や言葉を描いたり消したりして話を展開した山口晃さん(館林美術館講堂で)

絵や言葉を描いたり消したりして話を展開した山口晃さん(館林美術館講堂で)

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