「80の手習い」が心のよりどころに 91歳、阿左美さん

 「80の手習い」で始めた陶芸が「心のよりどころ。生きてる意味を見つけました」とほほ笑むのは、91歳の阿左美三代子さん。子どもはなく、再婚した夫と死別、いまは桐生市広沢町にある住宅型有料老人ホームを「ついの住み家」と定めて心静かに暮らす。粘土がさまざまな形になり、絵付けをして、「私の個性が出るの。使っていただけるとまた、うれしい」。1日に開催される買場紗綾市に、仲間とともに出品する。

 阿左美さんが入居するのは広沢や境野、伊勢崎市内にも老人ホームやグループホームなどを経営する介護クラブ(山守千登世社長)の一棟。同社で介護本部長をつとめる石原美江子さん(71)が「ただ歌をうたったりぬりえをするだけでなく、創造性のあることを」と、30年来続けている陶芸をお年寄りたちに教えている。

 「充実した時間を持ち、手指を動かして形になる。いびつでごつごつしていても、思いがこもっていて一つ一つ違う。生きた証しになるんです」。認知症の人や指が曲がってしまった人たちも夢中になるという。土をこしらえ、境野のホームに併設した電気窯で焼き上げるのは石原さんの役目になる。

 特に意欲的で絵が上手なのが阿左美さん。「絵を見るのは昔から好き。散歩に出て自然に話しかける。夜はつまらないテレビより月を見るのが好き」。心の中のナデシコやキキョウ、トンボなどが絵筆に乗る。「紙に習字するのと筆先のあたりが違うでしょ、難しいですよ」

 桐生に生まれ北小、桐女を出て、若いときは横浜で米軍向けにミシン刺しゅうをしたという。10年前に現在のホームに入居、デイサービス先などで粘土にふれる。「末路の道ですが、食べて寝て、ではむなしい。高慢ちきだけど、何のために生きてるのかって思う。陶芸を身につけて、救われました」と阿左美さん。「悟りかな」と笑った。

 介護クラブの作品は買場紗綾市やイベントなどに出品し、売り上げはお年寄りたちが好きなまんじゅうや甘酒などのおやつ代になるという。

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